2010年05月16日

瞬間的な人の消費の時代へ

佐々木俊尚氏の「電子書籍の衝撃」では、紙の本から電子ブックへの転換のシナリオを論考しています。読むための道具、コンテンツ提供のプラットフォーム、コンテンツを誰が提供するのか、それらを広げるためのコミュニティのあり方について、音楽業界での変遷を例に取りながら多面的に論考しています。新しい読書デバイスとしてのKindle, iPadなどの登場と、コンテンツを提供するためのクラウド上のプラットフォームが連携することにより、電子書籍のためのシステムが完成に近づいています。同時に、これらデバイスとネットワークにより、書籍はいつでもどこでも「アンビエント」な存在として、従来のPC上での情報操作とは一線を画したインタラクションがもたらされています。また、「編集性」というデジタルの特性により、これまでハードカバーにパッケージされたコンテンツという単位ではなく、自分の好みのものを好みのところだけリパブリッシュする、つまりコンテンツベースから「コンテキスト」ベースになってきています。

リパブリッシュという考え方は、90年代くらいの音楽におけるリミックスカルチャーのさらなるエンドユーザ化と言えるでしょう。リミックスはオリジナルに対するパーソナルな味付けです。それ自体は必ずしもゼロからの表現ではありませんが、ある作品(群)を自分のコンテキストに合わせて編集するアートです。書籍も同様に、まとまったコンテンツとしてではなく、コンテキストに応じて部分的に引用されたり編集されたりしていくのでしょう。twitterなどのリアルタイムなコミュニケーションメディア上にそれは端的に現れています。

本書を読んでいて、梅田氏の「ウェブ進化論」における「学習の高速道路と大渋滞の時代」の一節を思い起こしました。
「高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」。
コンテンツを自分なりの視点で評論・編集して、コンテンツのディストリビュートに間接的に関わるような人を佐々木氏の著書では「マイクロインフルエンサー」と呼んでいます。膨大な知を独自の視点で再編集する人と、その編集した結果を知としてフォローする人。知の高速道路のメタファーで言えば、つまり、知の高速道路は「ナビ付き」になったということでしょう。膨大なナレッジの断片を自分なりのコンテキスト上にアレンジする「ナレッジ・ナビゲーター」が知の高速道路の大渋滞を解消し、その道路を進む人たちは必要に応じて部分的に自分のコンテキストに合わせてそれら情報を活用して自分の進む先に向かう、そういった構図になってくるのでしょう。

twitterというメディアはその抽象度を高めたひとつの形態といえます。コンテンツ(モノ)の消費から、経験・コンテキストの共有(共感)、つまり瞬間の消費へと移り変わっていることを象徴的に表現しています。

人は、自分の生きる瞬間瞬間で、対話すべき人へのポインターを切り替えるようになるように思います。モノの消費、サービス(アイデア/デザイン)の消費。その次にくるのは、瞬間的に活用する人へのポインターを切り替える、そのポイント先としての「人の消費の時代」になるのではないでしょうか。

posted by igaiga at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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