イノベーションという「山」のメタファで考えてみましょう。高い山は大きな市場であり、イノベーションとはより高い山に登るチャンスを生み出すものです。

■テクノロジー
直感的にも、テクノロジーが最も「イノベーション」に近いでしょう。D.A.ノーマンはACM Interactionの「Technology First, Needs Last: The Research-Product Gulf」の中で革新的なイノベーションにおいては、まずテクノロジーありきで、次に製品が生まれ、ニーズは少しずつ生まれてくるというイノベーションのプロセスを説いています。
技術者は技術を研究開発しているときには、一つの山を登っているつもりでいます。しかし、実は違う山をいつの間にか登っていることがあるように思います。その今までと違う山はより高い所にたどりつく場合もありますし、今よりも低くなってしまう場合もあるでしょう。その潜在的なチャンス(あるいはリスク)がテクノロジーによるイノベーションの可能性の大きさといえます。
■人間中心設計
人間中心設計はというと、山を丁寧に登っていくイメージではないでしょうか。ある市場がみつかり、何かの目的を果たす製品・サービスを提供する。そのときに、そこで利用する人々にとって最善のものにすることが人間中心設計の基本的な考え方といえます。この場合、提供価値は確かに良いものになっていくのですが、まったく違う山にジャンプする潜在性はテクノロジーほどにはないのではないでしょうか。
■マーケティング
マーケティングはある山を定めたときに、その山の高さを測ることが主眼にあるイメージではないでしょうか。もちろん、様々なセグメンテーションの切り方によって新しい着眼を得て、新規の市場を発見することもあるでしょう。しかし多くの場合は、ある特定の市場について、その中で自身がどう振舞うと有利であるか、つまり山でいえば、どこから山に登ると他の人よりも早く・安全に頂上にたどり着けるかを考えることに近いのではないでしょうか。
■フィールドからのイノベーション
ビジネスエスノグラフィなどのフィールドからの情報を基にしたイノベーションの試みは、テクノロジーによるイノベーションに対する「人間の視点からの反乱」と言えるのではないでしょうか。
未来を少しだけ先取りしているマインドを持つ人々(エクストリームユーザ)からそのエッセンスを吸収して、新しい機会を創発する─つまり、ある山の中でもっとも山に多く住んでいるタイプの人々を対象とするのが人間中心設計であるのに対して、違う山に住んでいる人々やその人々を取り巻く環境から学び、新たなアイデアを生み出すという試みといえるでしょう。
この「山」のメタファにより、これらのメソッドがそれぞれどういう視点・立ち位置で何を見ているのか、その一端が整理できたのではないでしょうか。
新しいイノベーションが必要と考えている企業や組織において、どのようにするとイノベーションが起こせるのかについては、その企業や組織内に生きている人間にしか分からないように思います。
本当にイノベーションが必要なのか?必要だとしてそれが生まれるための潜在性が高まっているのか?何かその変化の兆候が見えているのか?これらを考えたときに、何かに課題があるとしたなら、活用すべきメソッドの組み合わせのバランスが崩れているのかもしれません。一度、皆さんの中で自分たちの立ち位置や課題をここで挙げたメタファを用いて整理してみてはいかがでしょうか。
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